コールセンターAI音声認識の精度向上戦略:苦手領域の分析と辞書登録による改善手法
本記事では、AI音声認識システムが苦手とする6つの領域を詳細に分析し、各領域の不得意理由と期待精度範囲を明らかにします。特に企業固有の専門用語については、辞書登録機能による劇的な精度改善の可能性をご紹介します。

はじめに:音声認識システムの現実と課題
コールセンター業界では、オペレーターと顧客の会話をリアルタイムでテキスト化する音声認識システムの導入が急速に進んでいます。品質管理の自動化、応答支援、感情分析など、従来は人手に依存していた業務の効率化が期待されています。
しかし、実際の運用では「思ったほど精度が出ない」という課題に直面することが少なくありません。特定の情報カテゴリでは認識精度が大幅に低下し、結果的に人手での修正作業が必要となり、期待していた業務効率化が実現できないケースが多々見られます。
本記事では、AI音声認識システムが苦手とする6つの領域を詳細に分析し、各領域の不得意理由と期待精度範囲を明らかにします。特に企業固有の専門用語については、辞書登録機能による劇的な精度改善の可能性をご紹介します。
AI音声認識が苦手とする6つの領域
■ 1. 日本人の名前
不得意理由:
- 同音異字の多さ(「たかし」→「隆」「高志」「貴志」など)
- 読み方のバリエーション(「優」→「ゆう」「まさる」「すぐる」)
- キラキラネームなど学習データに含まれない珍しい名前
- 前後文脈から推測困難な単独発話
期待精度範囲:
- 姓のみ:80-85%
- フルネーム:60-75%
- 珍しい名前:30-50%
■ 2. 英数字番号系(顧客番号、製品型番、注文番号)
不得意理由:
- 数字とアルファベットの混在による文脈情報の欠如
- 「B」「V」「D」「T」など類似音素の聞き分け困難
- 長い桁数による認識エラーの蓄積
- 意味を持たないランダム文字列
期待精度範囲:
- 短い番号(5桁以下):60-70%
- 長い番号(10桁以上):40-60%
- 英数字混在複雑形式:30-50%
■ 3. 数字番号系(電話番号、カード番号)
不得意理由:
- 「いち(1)」と「しち(7)」、「に(2)」と「し(4)」の類似音混同
- 連続する同一数字(「1111」など)の認識困難
- 話者による区切りタイミングの違い
- 長い桁数による認識負荷
期待精度範囲:
- 電話番号(11桁):75-85%
- クレジットカード番号(16桁):60-75%
- 長い顧客番号(20桁以上):50-70%
■ 4. 日付系(生年月日、納品日)
不得意理由:
- 「1日(ついたち)」「2日(ふつか)」などの特殊読み
- 昭和・平成・令和の年号混在
- 相対的表現(「来月の15日」など)
- 「2025年」の複数読み方(「にせんにじゅうごねん」「にまるにごねん」)
期待精度範囲:
- 西暦表記:80-85%
- 和暦表記:70-80%
- 省略・相対表記:60-75%
■ 5. 住所
不得意理由:
- 地名の難読性(「御徒町(おかちまち)」「雑司が谷(ぞうしがや)」)
- 「丁目」「番地」「号」など単位の多様性
- 地域固有名称の連続
- 方言による読み方の違い
期待精度範囲:
- 都市部一般住所:75-80%
- 地方住所:65-75%
- 難読地名含む住所:50-65%
■ 6. 企業固有の会社名、製品名、社内用語
不得意理由:
- 学習データに含まれない企業特有の固有名詞
- 業界特有の専門用語
- 社内略語(「PJ」「MTG」「KPI」など)
- 最新の製品名やサービス名
期待精度範囲:
- 辞書登録なし:30-50%
- 辞書登録あり:80-95%
この領域こそ、辞書登録機能による劇的改善が期待できる分野です。
音声認識AIが苦手な理由
■ 統計的言語モデルの限界 現代の音声認識は大量テキストデータから学習した統計的言語モデルを使用しますが、固有名詞や数字列は通常の日本語文法に従わないため、確率的予測が困難になります。
■ 学習データの偏り 学習データは主に新聞記事、書籍、会話データセットから収集されるため、特定企業の製品名や業界専門用語は十分に含まれていません。
■ 文脈情報の不足 単独で発話される情報や前後の文脈と関係のない固有名詞は、AIにとって推測が困難な領域となります。
解決策:辞書登録機能による精度向上
■ DolphinVoiceの辞書登録機能
DolphinVoice ️ は、企業固有用語の認識精度を大幅に向上させる辞書登録機能を提供しています。
主要特徴:
- UI画面とAPIの両方対応:直感的管理画面とシステム連携の両方で利用可能
- エラー率最大30%改善:過去案件の実務データに基づく参考値(※効果を保証するものではありません)
- 最適化された登録数:2000件まで登録可能、200件前後で最高性能を発揮
- 柔軟なカスタマイズ:表記・読み・優先度の詳細設定が可能
■ 活用シーンの実例
自社製品名の登録
従来:「スーパー効率アップ2024」→「スーパー光率アップにせんにじゅうし」
改善後:正確に「スーパー効率アップ2024」として認識
取引先企業名の登録
従来:「アクセンチュア」→「アクセン中」
改善後:正確に「アクセンチュア」として認識
業界専門用語の登録
IT業界:「PostgreSQL」「Kubernetes」「DevOps」
医療業界:「レントゲン」「MRI検査」「カルテ」
■ API導入方法
システム連携による一括管理
- CSV形式での一括インポート
- 既存システムからの自動同期
- 動的な辞書更新・管理
API仕様詳細:こちらへ ️
運用ベストプラクティス
- 重要用語から段階的登録開始(50件程度)
- 効果測定後の段階的拡張(100件→200件)
- 定期的見直しによる最適化維持
まとめ:戦略的な音声認識活用
AI音声認識には明確な苦手領域が存在しますが、その特性を理解し適切な対策を講じることで、実務に十分活用できる精度を実現できます。
重要ポイント:
- 現実的期待値の設定:情報カテゴリごとの適切な精度範囲理解
- 戦略的辞書登録:企業固有の重要用語を厳選して登録
- 継続的最適化:運用結果に基づく辞書改善
特に企業固有の専門用語については、DolphinVoiceの辞書登録機能により大幅な精度向上が期待できます。音声認識技術の限界を理解し、適切な機能活用により、コールセンター業務の真の効率化を実現しましょう。
■ 辞書登録機能をご検討の企業様へ
DolphinVoiceの辞書登録機能による課題解決の詳細は、技術仕様ページ ️ でご確認いただけます。実際の効果を体験いただけるトライアルもご用意しております。
著者の紹介
朝倉 匡廣 / Andy Yan
株式会社DolphinAI 代表取締役社長
音声AI分野で12年以上の実績を持ち、30社以上の企業に音声AI導入を支援。株式会社アドバンスト・メディアで8年間、海外事業部長として日本、中国本土、台湾、香港市場での音声認識・音声合成プロジェクトを牽引。音声認識、音声合成、コールセンターAI、AI会議録、音声対話デバイスなど幅広い分野での専門知識を持つ。100篇以上の技術記事を執筆し、AIカンファレンスでの登壇多数。
主な登壇実績
- 「AI新勢力・プロダクトオープンデー」 by Tokyo Generative AI Development Community(2025年10月25日)
- 「TOPAI国際AIフロンティア・エコシステム 招待者限定イベント」 by TOPAI & インスピランド・インキュベーター(2025年7月29日)
- 「Global AI Conference & Hackathon」 by WaytoAGI(2025年6月7日)
連絡先
- Email: mh.asakura@dolphin-ai.jp
- LinkedIn: https://www.linkedin.com/in/14a9b882/
株式会社DolphinAIについて
日本語を中心とした音声認識・音声合成・音声対話技術を開発・提供するAI企業です。
サービス:DolphinVoice(音声対話SaaSプラットフォーム)
提供機能:音声認識(日本語・英語・中国語・日英/中英混合)、音声合成(日本語・英語・中国語)
利用実績:コールセンターやAI議事録業界にて、1日平均約7,000時間の商用利用
■ セキュリティ体制
- ISMS(ISO/IEC 27001)認証取得済み
- SOC2 Type I レポート取得取得済み
- 詳細はこちら ️
■ 問い合わせ
️ 03-6161-7298

